【スタンステッド(英イングランド)】荘厳なビクトリア風の屋敷の中で、ジュリー・グリスト氏(66)は生身の人間が死者と話して明日のお告げを聞く方法を教えている。

 数十年にわたり死者と交信してきたと語るグリスト氏は、欧州やアジア、北米からやってきたばかりの十数人の生徒に心霊を読み取る「リーディング」の目的を説明した。同氏は心霊研究について、不吉な予兆を示して人々を落胆させたり怖がらせたりしてはならないと話す。「リーダー(読み取る者)としての義務は人々の感情を高揚させることだ」

 グリスト氏はアーサー・フィンドレイ・カレッジでインストラクターを務めている。このカレッジには50年前から占い師や霊媒師の訓練を行うコースが設けられている。初心者クラスに加え、カレッジには生きている、あるいは死んだペットと高度なコミュニケーションを求める人向けのクラスがあり、さらに上級になると「心霊体とは何か」というより技術的な質問に答えるコースも用意されている。

 かつては「お化け屋敷」として地元住民に知られていたアーサー・フィンドレイ・カレッジは、ロンドンから約64キロメートル離れた、だだっ広い敷地にある。ここの教師らは、心霊能力が単なる神からの授かり物ではないと信じている。

 カレッジのインストラクターで広報担当のスティーブン・アプトン氏は「霊能力は他の多くの技術と同様に身につけられる技術だ」と話す。アプトン氏によると、同校ではここ数年、プロの霊能者がクラスで教える機会が多くなっている。これらプロの霊能者は死者の前で話すのを恐れるといったストレスに対処する手助けをしているという。

 インストラクターらは生徒に対し、霊が語りかけてきても身構える必要はないと話す。「生前に悪い忠告をしていたジムおじさんなら、死んだ後も悪い忠告を言い続けるだろう」。

 アーサー・フィンドレイ・カレッジは1年に最大5000人の学生を受け入れる。学費は1週間で570ポンド(約10万円)だが、これには部屋代と食事代が含まれる。屋敷にはダイニングルームがあり、図書館には「超感覚的知覚の働かせ方」といった本が所蔵されている。

 カレッジの陽気な雰囲気は、霊媒という行為が古代ギリシャの「デルフォイの神託」からいかに変化してきたかを物語っている。デルフォイの神託では巫女(みこ)が不健全な場所で神がかり(トランス)状態に陥り、オイディプスに「お前は父を殺し,母と結婚するであろう」という驚くべき神託が与えられる。

 現在は居心地良いリビングでインターネットを通じて心霊や霊媒について語ることができる。

 動物とのコミュニケーションについての授業に出席するためウェールズから来た霊媒師のジーナ・マリーさんは、「スカイプを通じてリーディングするのには驚いた」と話した。同氏はスカイプで霊を見ることができると述べ、「完全に驚いた。予想していなかった」と語った。

 霊媒師によると、既存の宗教や心理カウンセリングに飽き足らない人々が霊媒への需要を高めてしている。

(後略)

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