したり顔という言葉がある。今風に言えば、どや顔だろうか。いかにも得意そうな様子を表す。紫式部がライバルの清少納言に対して使っていることを、林義雄さんの『俳人のためのやまとことばの散歩道』(リヨン社)で知った。

 ▼「清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人…よく見ればまだいとたへぬこと多かり」。林さんの現代語訳によれば、いかにも得意げにふるまっている清少納言は、「よく見るといかにも未熟なところが多い」と言い切っている。

 ▼清少納言はともかく、韓国のサッカー選手、朴鍾佑(パク・チョンウ)選手には見事に当てはまる。ロンドン五輪の3位決定戦で日本を破った後、まさしくしたり顔で、「独島はわれわれの領土」と書かれたボードを掲げた。韓国のメダルラッシュの余勢を駆った面もあるのだろう。ひょっとして、先の李明博大統領の竹島不法上陸と連動しているのか。

 ▼いずれにしてもこの行為は、五輪憲章に明らかに違反している。国際オリンピック委員会とすれば、成功裏に終わりつつあった大会に泥を塗られた形だ。甘い処分でお茶を濁せば、五輪の舞台が、各国選手の過激な政治宣伝の場にもなりかねない。

 ▼「政治的」にも、韓国にプラスになったのか疑問だ。竹島問題について知識も関心もなかった国々が、歴史的に日本固有の領土でありながら、韓国が不法占拠している事実を知るきっかけになるかもしれない。

 ▼そんなもめ事は、国際司法裁判所で決着すべきだ、との国際世論が喚起できればしめたものだ。韓国内では、違反行為を問題視する声はほとんど上がっていないという。とすれば朴選手だけでなく、国全体の未熟さを国際社会にさらけ出したことになる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120814/plc12081403160005-n1.htm