米国政府が、野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の規制対象にアメリカウナギなどのウナギを加えるよう検討を始めたことが分かった。対象には日本が中国などから輸入するニホンウナギも含まれており、日本市場への影響が懸念される。ニホンウナギの稚魚は10年から3年連続の不漁で、かば焼きなどの価格が高騰しているが、農林水産省は「資源が枯渇している状況ではない」(郡司彰農相)と反論。米国が同条約の締約国会議に正式に提案するか動向を注視している。

 米政府が今年4月に公表した官報によると、米国は世界自然保護基金(WWF)など環境団体の提案に基づき、アメリカウナギとその類似種について、「現在は絶滅の恐れはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅の恐れがある」と定める規制を適用すべきか検討を始めた。

 同条約ではアメリカウナギと同じく大西洋に生息するヨーロッパウナギが07年に規制対象になっており、米政府は「ヨーロッパウナギへの規制で、アメリカウナギの需要が拡大する可能性がある」と懸念を表明。太平洋のニホンウナギは稚魚の段階でアメリカウナギと区別がつきにくいことから、取引の規制対象として検討されているとみられる。

 米国が検討する規制がニホンウナギにも適用された場合、商業目的の漁獲は可能だが、日本が中国などからウナギを輸入するには、輸出国の許可証が必要となる。水産庁によると、日本国内のウナギの供給量の6〜8割は中国、台湾からの輸入が占めている。輸入のうち、約7割はかば焼きなどの調製品で、約3割が稚魚など生きたウナギだ。

 かつて中国はヨーロッパウナギを輸入していたが、07年に規制対象になったため、08年から米国産、カナダ産の稚魚の輸入を開始した。これに呼応するように、08年の中国から日本へのウナギの輸入は07年に比べ半減。水産庁は「規制と輸入減の因果関係はわからない」としているが、新たな規制が中国や日本に影響する可能性は否定できない。

 ワシントン条約の締約国(175カ国)会議は来年3月、タイで開催の予定で、ニホンウナギを規制対象として提案する場合は10月が期限となる。提案には日本など関係国と事前協議が必要となるため、農水省は「(科学的な資源調査など)米国が判断する材料をしっかり答えていきたい」(郡司農相)としている。

毎日新聞 7月18日