日銀は11、12日の金融政策決定会合で日本経済の先行き回復シナリオを維持し、現行の金融政策を据え置いたが、米中経済の先行き不透明感が強まる中、海外経済への警戒感を強めている。引き続き最大のリスク要因と位置づけている欧州情勢は小康状態にあるものの、日銀が描く景気の先行き回復シナリオの実現は、海外経済とりわけ中国の動向がカギを握る。

 

 日銀は11、12日に開いた金融政策決定会合後に公表した声明文で、海外経済について「緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない」との見解を示し、海外経済に対する警戒モードを前月より強めた。債務問題がくすぶる欧州経済は今後も停滞が長引く可能性が高い中、ここにきて米国や中国経済の不透明感が増しているためだ。白川方明総裁も会見で、海外経済の減速が長引いているとの認識を示し、日本経済への影響について、欧州債務問題を背景に「中国などを通じた間接的な輸出の減少が想定よりも大きかった」と指摘。先行きの不確実性が高い中で、企業の投資見送り姿勢が継続しているとの認識も示した。

 

 日銀では、4月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の中で、日本経済は2012年度前半に緩やかな回復経路に復していくとの見通しを示し、現在もそうした中心シナリオを維持している。4月に比べて海外経済の減速によって外需は想定よりも弱めとなっているが、東日本大震災からの復興関連需要や個人消費などで内需は堅調に推移しており、全体として景気が回復に向かっていく力自体に変化はないとみている。しかし、白川総裁が会見で「今後の見通しを考えていく上では、内需の堅調が維持されている間に外需が回復、海外経済の減速が止まって回復していくことになるかがポイントになる」と指摘したように、日本経済の判断を現在の「持ち直し」から「回復」に引き上げるには、少なくとも海外経済が回復に向かう見通しが立つことが前提になりそうた。

 

 とりわけ、日本と貿易取引などの関係が深い中国経済の動向がカギを握る。中国経済は欧州経済の停滞に伴う輸出の減少や、これまでの金融引き締め策などによって、想定よりも「減速が長引いている」(白川総裁)。ここにきて中国人民銀行(中央銀行)が2カ月連続で利下げに踏み切るなど、インフレの抑制を追い風に、明確に景気テコ入れに動き始めた。今秋の共産党大会を控えて、財政措置や規制緩和を含めた政策総動員への期待も高まる。白川総裁も中国経済の先行きについて「金融緩和やインフラ投資の前倒しなど中国当局による政策対応も強化されており、その効果が徐々に顕在化していく」としており、「徐々に減速から脱していく」ことをシナリオの中心に据えていることを明らかにした。もっとも、「中国をめぐっては、いろいろな不確実性がある」とも指摘しており、欧州発のショックが発生しなくても、中国経済減速のさらなる長期化が日本経済の下振れリスクを次第に高めていく可能性にも注意が必要な情勢になっている。

 

 ロイターニュース 東京 12日