【産経抄】2012.6.30より

 競馬用語に「ズブい」という言葉がある。馬が年をとってくると騎手が鞭(むち)をふるってもピューと走らず、反応が鈍くなる意味だそうだが、加齢とともに一層ズブくなった小欄もこのニュースには驚いた。

 ▼東日本大震災で政府が昨年度予算に計上した復興費約15兆円のうち、6兆円近くも余らせてしまったのだ。未使用率は40%にのぼる。これほどの規模の予算が執行されなかった例はかつてないそうで、復興がなかなか進まないのもむべなるかな。

 ▼言い訳はいろいろとつく。復興交付金の査定と配分を担う復興庁の発足が与野党対立のあおりで今年2月にずれ込んだ、各自治体の復興計画策定が遅れた、などなど。だが、最大の理由は民主党政権の未熟さと復興への熱意のなさにつきる。

 ▼福島第1原発事故直後、当時の菅直人首相がみせた常軌を逸した行動ぶりは、国会や民間の事故調査委員会で次々と白日の下にさらされている。事故が少し落ち着いた後も「脱原発」ばかりに熱中し、被災地復興に全力を尽くしているようには見えなかった。視察に訪れた被災地で罵声を浴びせられたほどだ。

 ▼後を継いだ野田佳彦首相も消費税増税に政治生命をかけるのに忙しいようで、正月に被災3県を駆け足で巡って以来、最近はとんと足を踏みいれていない。奥方によれば「放射能を怖がって地元・岩手に寄りつかなかった」小沢一郎元代表よりはましだが、無意識に被災地を忘れてはいないか。

 ▼その小沢氏はきのうも輿石東幹事長と小田原評定を続けたが、結論はまたも先送り。けじめもつけられない民主党やかつてのようにスパッと新党をつくれない小沢氏の賞味期限は既に切れた。有権者はそんなにズブくない。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120630/stt12063003530001-n1.htm

【産経抄】
http://sankei.jp.msn.com/column/topics/column-14576-t1.htm