2014.1.15 03:11 [産経抄]

 もう遠い昔のことみたいな気がしていたが、つい石原都政時代を思い出した。被災地から東京へがれきを運ぶ専用列車が終わったというニュースだ。週5〜6日、1本当たり400トンを運送し続けてきたが総量も少なくなり、お役目ご苦労となったらしい。

 ▼東日本大震災で発生したがれきは、復興にとって最大の障害だった。宮城県では年間処理量の19年分、岩手県は11年分に上ったという。このため、両県などは他の自治体に受け入れと処理への協力を求めた。だが、大半の自治体からの返事は「ノー」だった。

 ▼全く問題にならない放射能汚染を風評で恐れる住民の反対に屈したのである。被災地復興への大きな手助けと分かっていながら、いざ自分も関わるとなると、とたんに冷淡になる。大震災以来声高に叫ばれた日本人の「きずな」も口先ばかりと思わせた。

 ▼そんなとき、真っ先に引き受けを表明したのが東京都の石原慎太郎知事だった。当然放射能汚染に問題ないことを確認してからだが、「(それでも反対する者には)黙れといえばいい」と、見事な啖呵(たんか)を切ってもみせた。以来いくつかの自治体が処理要請に応じたのだ。

 ▼むろん石原氏の都政には毀誉褒貶(きよほうへん)がある。しかしこの「決断」は被災地から見れば吹雪の中で一条の灯(あか)りを見つけたような気がしただろう。これまで10万トン以上が運び込まれたが、担当者は「専用列車は終わっても、最後まで受け入れ処理をしていく」と胸を張った。

 ▼その東京都の新しい知事選びが始まる。原発問題を争点にしたい立候補予定者もいるが、その前に石原氏の決断をどう評価するか論じてほしい。「地域エゴ」と言っては悪いが、住民の「総論賛成・各論反対」が地方自治最大の問題だからだ。

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