2014.1.3 07:00 

 パナソニックが、筋力を機械的にサポートして重い物を持ち上げる「パワードスーツ」を世界で初めて量産化することが、分かった。平成27年にも発売する。年間1千体を生産し、価格は1着50万円程度を想定している。災害救助や原子力発電所内など短時間での作業が求められる現場での利用を見込んでいる。将来的には、宇宙や深海などの過酷な環境下でも使えるスーツも開発する。

 身体に装着することで、人間の筋力の限界を超える力を引き出すパワードスーツは大学、民間企業など複数の機関が研究開発を進めているが、量産化の例はまだない。パナソニックのスーツはパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)のバッテリーに使われているリチウムイオン電池を大型化して搭載し、モーターで動く。「つかむ」「はなす」といったアーム(腕)の操作は、使用者の手元にあるグリップで行う。

 開発はパナソニックの子会社で、ロボット事業を展開するアクティブリンク(奈良市)が手掛けた。100キロの重量物を持ち上げることができ、人間の小走り程度の最大時速8キロで走行、10度の勾配(こうばい)の坂を上れる試作品を製造することに成功した。  パナソニックは26年内に量産体制を整備する。日本の大手商社と提携して販売ルートを確保。また、リース会社に販売して、レンタルする事業なども検討している。

 量産品は、機能を絞って30キロ程度の重量に対応した普及版を「パワーローダーライト」と名付けて販売する。1回の電池充電で2〜3時間動かせる。アームは交換することができ、つかむだけでなく、ハンマーで叩いたり、スコップで掘ったりするなどの作業もできるという。

 さらに宇宙服や潜水服の下に装着するスーツの開発も視野に入れる。いずれも自在に操作するには相当な力が必要で、実際、米航空宇宙局(NASA)では、宇宙服の下にパワードスーツを装着することが検討されている。完成品は、公的機関や研究施設に納入する考えだ。
 

 パナソニックが世界で初めて量産化に乗り出す「パワードスーツ」。世界で開発競争が繰り広げられているが、日本は、パナソニック以外にも筑波大大学院の山海嘉之教授(サイバーダイン最高経営責任者)が生体電位信号を読み取り動作するパワードスーツを初めて開発するなど先行している。米ハリウッド映画「アイアンマン」では、パワードスーツを着た主人公が活躍するが、日本の技術力で現実となる日も近づいている。

 山海教授のパワードスーツは「HAL」と呼ばれ、装着者の皮膚に取り付けられたセンサーを通して微弱な生体電位信号を感知し、内蔵コンピューターで信号を解析。装着者の動きを補助する。身体障害者や高齢者の運動補助のために開発されており、福祉施設には一部貸し出されている。

 このほか、ホンダは二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」で培った制御技術を応用し、歩行をアシストするパワードスーツを開発。トヨタ自動車も医療用などで開発を続ける。

 近年、日本企業はスマートフォン(高機能携帯電話)など画期的な新商品開発で出遅れが目立つ。パナソニックはスマホで販売不振で個人向けから撤退を余儀なくされただけに、ロボット事業の成否が注目される。(藤原直樹)
 




http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/140103/wec14010307020001-n1.htm