2013.12.13 03:27[産経抄]

 テレビドラマ『半沢直樹』の決めぜりふ「倍返し」は、流行語大賞に選ばれた。放映中の『リーガルハイ』の怪演も大評判だ。堺雅人さんは、今年もっとも活躍した俳優の一人だろう。 

▼その堺さんが同じ宮崎県出身で、早稲田大学の先輩にも当たる、若山牧水の大ファンだという。酒と旅をこよなく愛した歌人として知られる牧水とは、高校時代の恩師である歌人の伊藤一彦さんを通じて出会った。 

▼「牧水にとって酒も、歌と同じくらい大事な宗教だったのかも」。堺さんは伊藤さんと杯を傾けながら、『ぼく、牧水!』(角川書店)のなかで熱く語っている。いかにも飲み方に品格が漂っていそうなお二人には釈迦に説法だが、酒はときに「凶器」にもなり得る。 

▼国土交通省によると昨年度中、乗客による鉄道係員への暴力行為が900件を超えた。特に多発傾向にある首都圏では、約7割が飲酒絡みだ。「お酒は理由にならない!暴力は犯罪です」。たまりかねた全国の鉄道事業者は、忘年会シーズン本番を迎えた今週から、「STOP暴力」を訴えるポスターを駅構内や列車内に掲示している。 

▼泥酔のあげく暴行や強制わいせつに及んで、有名人が逮捕される事件も後を絶たない。各自治体も、職員の飲酒運転やセクハラなどの不祥事に警戒感を強めている。「その一線 越えたら職場へ 戻れない」。酒宴が一段落する時刻になると、職員に注意を促すメールを送る消防署まである。 

▼「白玉(しらたま)の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」。牧水の数ある酒を詠んだ歌のなかでも、もっとも人口に膾炙(かいしゃ)した一首であろう。師走の夜も「酒はしづかに」、しかもほどほどにと自らに言い聞かせて、街に繰り出すことにする。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131213/trd13121303280001-n1.htm