2013.11.30 03:05 [産経抄]

空を見上げるのは、雨が降り始めたときぐらいの抄子すらがっかりしたのだから、天文ファンの嘆きはいかばかりか。「100年に1度」とまで騒がれたアイソン彗星(すいせい)が、太陽に近づきすぎてほぼ消滅してしまったという。

▼多くの専門家は、「想定外だった」と話す。どんなにコンピューターが発達し、望遠鏡の精度が増そうとも、お天道様のあれこれは、人知の及ばぬところがあまりにも多い。

▼人知はなかなか深まらないが、人間の欲深さには際限がない。勝手に沖縄県・尖閣諸島上空を含めた防空識別圏をつくった中国は、空域に入る航空機に事前通告を義務づけ、従わない場合は「防御的緊急措置を講じる」と威嚇した。

▼いまや世界第2位の経済大国となった中国は、あり余るカネで空母を買い、ミサイルを増やし、新型戦闘機を量産している。子供のオモチャと同じで、買いそろえたら使いたくなるのは人情というもの。「中国の夢」という周辺国には悪夢でしかない妄想を振り回し、当面の照準を尖閣諸島に置いている。

▼なんともオーバーな、と思われる読者がおられるなら、北京でも上海にでも行かれるといい。新聞には「闘争の狙いを日本に集中し、野心を打ち砕くべきだ」との見出しが躍り、テレビでは、軍事評論家と称する人物が、今にも日本が攻めてくるような口ぶりで危機をあおっている。

▼そんな中国も米国は怖いのだろう。米軍のB52が防空圏を堂々と通過しても黙って見送るだけだった。「緊急措置」を講じれば、中国軍そのものが、アイソン彗星のように消えてなくなりかねないと震え上がったのか。かつて毛沢東は、米国を「張り子の虎」と揶揄(やゆ)したが、今や中国がその虎になってしまったようである。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131130/chn13113003050000-n1.htm


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