2013.10.20 03:18 [産経抄]

 紅衛兵は中国の文化大革命にとって欠かせない存在だった。毛沢東思想に踊らされるまま、実権派と呼ばれる政治家や共鳴する文化人らをつるし上げる。ときにはリンチを加え、権力闘争の片棒を担いだ。精神的に未熟なだけに、恐るべき若者集団だった。

 ▼それから40年以上がたち、その元紅衛兵たちが「被害者」に謝罪を始めているという。北京の中高一貫校では、年老いた元教師8人に集まってもらい「公開の場で傷つけて申しわけない」と謝った。安徽省では母親を密告し処刑させた元紅衛兵の懺悔(ざんげ)が報道された。

 ▼本紙国際面のコラム「上海余話」によれば、このところそうした謝罪報道がしきりだという。元紅衛兵といってもほとんどがもう60代だ。さすがに「若気の至り」では済まない自らの愚かしさに気付いたのかと思った。だが、そう単純ではないらしい。

 ▼ある大学教授によれば、懺悔報道をしている多くは中国共産党の改革派に近い新聞だという。元紅衛兵に文革批判をさせることで、毛沢東路線への回帰の動きを見せる習近平政権を牽制(けんせい)する狙いがある。彼らはまたも、党内権力争いの片棒を担がされているというのだ。

 ▼だが形だけとはいえ謝罪したというのなら、日本にも謝ってほしい人たちがいる。「全共闘」のメンバーもそうである。昭和40年代の大学紛争で、キャンパスを封鎖して「一般学生」の勉学の自由を奪い、ゲバ棒を振り回す。「団交」の名で学長や学部長をつるし上げた。

 ▼全共闘運動を擁護していたのに、研究室を散々に荒らされ激怒した進歩的教授もいた。彼らも元紅衛兵と同じ60代を迎えた。「被害者」たちに対しどんな思いを持っているのだろう。こちらも「若気の至り」では済まされないはずだ。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/131020/chn13102003190000-n1.htm



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