2013.9.30 03:12 [産経抄]

 歴史家の山本博文さんによると、江戸時代の武士は、「現在ならどうということもないことで切腹に追い込まれた」(『切腹』光文社新書)。たとえば、会津藩の財政窮迫を打開するよう命じられた藩士の長井九八郎の場合がそれにあたる。

 ▼九八郎が献策した藩札の発行は、家老の評議をへて、藩主の裁可を得たうえで実施された。ところが、諸物価の高騰など、かえって社会に混乱をもたらした。すると、なんの不正も行っていない九八郎だけが責任を取らされ、切腹を命じられたという。

 ▼他の藩との争いを避けるために奔走した武士が、かえってその行動をとがめられて、切腹した例さえある。山本さんは、「現代は、ミスや不注意に比較的寛容な時代」というが、そうともかぎらない。

 ▼先月、名古屋地裁で出た判決は、認知症の人を自宅で介護する家族に対してあまりに過酷なものだった。平成19年12月、愛知県内に住む男性(91)が、線路内に立ち入り、電車にひかれて亡くなった。JR東海が列車遅延に対する損害賠償約720万円を要求したのに対し、裁判所は介護をしていた妻と協力している長男に全額の支払いを命じたのだ。

 ▼事故は、妻がまどろんでいる間に、男性が家を出て起きた。認知症の人を24時間監視するのは不可能だ。そんな実態を無視して、「監督責任」を認めた判決は、遺族だけでなく、介護に関わる多くの人に衝撃を与えている。

 ▼そうかと思えば、乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故で神戸地裁は、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長に無罪を言い渡した。『切腹』の副題にもなっている「日本人の責任の取り方」は、江戸時代だけでなく、平成の今もどこかおかしい。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130930/trl13093003130000-n1.htm



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http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121104/dst12110407010002-n1.htm

2013/05/12 04:55 (3450/0)
こういう事件って映像証拠があっても、負ける様になってるのか?このニュースで「冤罪痴漢」を仕掛ける犯罪者の拍車がかからなければいいけど。この裁判官のみの「珍しい事例」であって欲しい・・・