2013.9.29 03:10 [産経抄]

 自国の大統領や首相が無能だというのは最高の「国家機密」であり、決して漏らしてはならない。国際的なジョークの定番といっていい。機密といってもその程度のもの、国民はとっくの昔に知っている。そんな皮肉も込められているのである。

 ▼中国の国家安全省に拘束された朱建栄氏に、国家機密を漏らした疑いが持たれているらしい。かつて日本で出版した著書に朝鮮戦争などに関する未発表資料が引用されていた。日本での講演などに、尖閣諸島関連の非公開文書の内容が含まれていたということのようだ。

 ▼いかにも作為的な臭いがする。第一、中国では「指導者の無能」ではないが、インターネットで簡単に引き出せる資料でも実は国家機密だったということもあるそうだ。朱氏が講演や著作で引用したものも、中国政府に害をもたらすようなものではないという。

 ▼朱氏は日本での活動が長いが、中国が嫌う人権活動家ではない。だから悪意で機密を漏洩(ろうえい)したとは考えにくい。失礼ながら重要資料に直接触れられるほどの実力者でもなさそうだ。もし朱氏にそれを供与した権力中枢の者がいたとすれば、そちらの方が問題だろう。

 ▼本紙報道によれば朱氏だけではない。このところ知識人や対日関係者、記者らが次々に拘束され、その数は100人を超えたという。それも体制批判したからではなく、日本や欧米の価値観を理解するというだけで狙われている。言論統制のための見せしめに思える。

 ▼身内からも「習近平政権が毛沢東の政治手法をまねている」と批判される。文化大革命時代に戻ろうということかもしれないが、それも「国家機密」だろうか。よくそんな国のメディアが安倍晋三政権を「右翼的」などと非難できるものだ。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130929/chn13092903110000-n1.htm



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