2013.6.29 03:15 [産経抄]

 明治維新の立役者である西郷隆盛は、自らを「南国」という意味の南洲と号した。今でも文庫本で手軽に読める「南洲翁遺訓」は、幕末の江戸で騒乱を起こそうとした薩摩藩と激しく対立した庄内藩の関係者がまとめたものである。

 ▼庄内藩は、NHK「八重の桜」で描かれている戊辰戦争で、会津藩と同盟を組み新政府軍と戦った。奮戦及ばず降伏したが、終戦処理でみせた西郷の度量の大きさに藩主がほれこんだ。明治3年、家臣を引き連れて薩摩まで出かけて聞いた話が「遺訓」のもとになった。

 ▼遺訓では、財政について「入るを量りて出づるを制するの外(ほか)更に他の術数無し」と官の無駄遣いを厳しく戒めている。残念ながらいまの鹿児島県知事は、あまりお読みになっていないようだ。

 ▼読んでいたなら、1億1800万円もの税金を使って県職員1千人に3泊4日の上海旅行をプレゼントしようなどという愚策を思いつくはずがない。さすがに県民の批判を浴びて費用を3400万円に圧縮したようだが、無駄遣いには違いない。

 ▼日中関係の悪化で乗客が減り、存亡の秋(とき)に立つ上海−鹿児島間の航空便存続のための措置だそうだが、中国の航空会社を助けるためになぜ税金を使わねばならないのか。観光客を増やしたければ、ゆるキャラの「くまモン」が大ヒットしている隣の熊本県のようにもっと知恵を絞ればいい。

 ▼南洲翁はこうも語っている。「彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、好親却て破れ、終に彼の制を受るに至らん」。外交で強国とうまくやろうとへつらってばかりいると、ついには属国となるとの教えを県知事はよくかみしめてほしい。鳩山由紀夫元首相はもう手遅れだが。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130629/lcl13062903160001-n1.htm



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