2013.6.2 03:04 [産経抄]

 ナイル川中流にあるルクソール神殿は古代エジプトの遺跡である。その貴重な神殿の壁に彫られた人物像に、中国語による落書きが見つかった。中国国内で「悲しくて、恥ずかしいこと」として、ネット上で犯人捜しが始まる騒ぎとなった。

 ▼あげく「特定」された中学生の両親が、地元紙で謝罪したという。中国各紙が伝えたニュースだ。それにしても中学生でエジプト旅行とは、中国も相変わらず羽振りがいい。落書きを見つけたのも中国人観光客だといい、最近の中国のアフリカ進出ぶりを見る思いがした。

 ▼中国の対アフリカ援助は3年間で200億ドルに上るそうだ。日本のアフリカ向け年間ODAは18億ドルだから、その勢いはすごい。カネだけではない。地下資源や農業の将来性に目をつけた政府がヒトもどんどん送り出す。今アフリカで最も目につくのが中国人の姿だという。

 ▼開発途上の国にとってカネもヒトもありがたい。だから中国としても、援助をつぎ込むことでアフリカ諸国を味方につけ、欧米や日本に対し優位に立とうとしている。国際政治的にはそう考えるのが自然だ。だがアフリカ側の受け止め方はちょっと違うらしい。

 ▼確かに中国はアフリカで道路や空港を造り、学校や病院を建ててきた。だがそこで働くのはほとんど中国人で、技術も落とさない。その上中国製の安い衣料や薬を売りつける。だから「援助ではなくビジネスだ」「新しい植民地主義」との批判が芽生えている。

 ▼横浜で始まったアフリカ開発会議にはアフリカの全ての国に近い51カ国が参加している。「中国式」ではない援助への期待の表れであるのは間違いない。相手の底力を引き出すという伝統の支援策で応えられるか、日本外交の正念場である。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130602/chn13060203060000-n1.htm



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